
その2
○記載文の話・・・
新種発表をする場合、種名を世界共通の学名で表すことは前の項に書きましたが、学名は何語で書かれているのでしょう?
答えはラテン語です。今は話されていない古い言葉なんですね。それ以外は読んだ人がわかるような言葉で、記載文は書かれています。命名規約では、記載文を何語で書かなければいけないといった規定はありません。
ただし、通常、分類学は世界共通の学問であることから、英、仏、独、露、中の言葉で書かれているものが多いです。日本語で書いた場合も、別に英文の記載をつける場合が多いです。
体の部分名について
記載文は形質を記載したものです。その形質とは肉眼的に、光学顕微鏡的に、電子顕微鏡的に等といくつかの視点はありますが、体の各部分がどうなっているかを記したものです。ですから昆虫の記載文には昆虫の体の各部分を表す言葉があり、それがどうなっているかが記されているわけです。昆虫を同定するにはこれらの言葉を避けて通るわけにはいかないのです。
ですから、これから出てくる言葉は覚える必要があります。
○用語レベル1(用語そのものの大元になる単語)
頭部・・・・・頭のこと(英語ではHead)
胸部・・・・・胸のこと(英語ではThorax)
腹部・・・・・腹のこと(英語ではurosome)
翅・・・・・・・昆虫の羽のこと(英語ではWing)
脚・・・・・・・昆虫で言う足のこと(英語ではLeg)
小学生のころ理科で昆虫は頭部、胸部、腹部の三つに分けられ、脚が6本、翅が4枚あるのが基本であると習った気がするのですが、現実的にはそんな単純なものではなくかなり細かく細分化されています。
○昆虫の体は直方体の箱を置いた時の視点のように、背中側から見える面を背板、横から見える面を側板、腹側から見える面を腹板と呼びます。
例えば胸部では、大きく前胸、中胸、後胸の三つに分けられていますが、前胸の背板・・・前胸背板、中胸の側板・・中胸側板、後胸の腹板・・・後胸腹板、のように、2つの言葉をくっつけてその部位を表します。つまり、前、中、後の各部位ごとに背板、側板、腹板があるわけです。(時にはこの板という言葉を略して、前胸背とか、中胸背、腹背などと言う場合もあります。)
ただ、注意しなければいけないのはこの背板、側板、腹板というのはあくまでも、説明のために四角い箱を例に取りましたが、現実の昆虫では、いろいろな形をしているので、背板が大きかったり、腹板が幅が狭かったりしているので、注意が必要です。
胸部についてのイメージのわかない方は、前脚が生えている場所は前胸であり、中脚がはえているところは中胸であり、後脚が生えているところは後胸であるということで覚えると良いです。
○用語レベル2(まだまだ基本の最重要用語)
触角・・・・・頭部より出てる昆虫のメインのヒゲのこと(英語ではAntena)
脚は根元より、基節(きせつ・・英語ではCoxa),転節(てんせつ・・英語ではTrochanter),腿説(たいせつ・・英語ではFemur),脛節(けいせつ・・英語ではTibia)、ふ節(ふ節・・英語ではTarsus)、前ふ節(ぜんふせつ・・英語ではPretarsus)の6つに大別されます。
(ふ節の「ふ」は足に付を合わせたもの)
触角やふ節、腹部などは節に分かれていますが、これらは根元の方から順に触角第1節とか、第4ふ節とか、第3腹節とかのように表現します。(先端に行くほど数が大きくなるように表現する)
翅脈・・・翅にある棒状、脈状の構造、植物の葉にある葉脈をイメージすると良い・・英語ではNervulus)
○用語レベル3(重要用語ではあるが、目などの分類群によっては有無や構造がかなり違うもの)
☆目・・・視覚を司る器官、昆虫では複眼と単眼がある。(英語ではEye)当然ではあるが昆虫にはまぶたはない。
複眼・・・通常、昆虫の目として認識されてる小さなレンズ組織(個眼)の集合体。(英語ではCompound eye) 機能的にも、脊椎動物の目の機能と同様と考えられる。
単眼・・・数珠玉状のレンズ組織よりなり、通常1個〜複数個あるものが多いが全く単眼を欠くものもある。通常、明るさなどを感知する器官であると考えられている。(英語ではSimple
eye またはOcellar)
☆口、口器・・・頭部にある、いわゆる口の事、食料や水等をを飲み込んだりするときに使う器官。ただし、昆虫は呼吸方法が脊椎動物とは大きくことなるので、呼吸には使っていない。そしゃく型、刺入型、吸収型、の3タイプに大別される。(英語ではMouth)
○これらの口器はさまざまなパーツより成り立っており、その形や色を見ることが同定には大変重要です。双翅目昆虫の口器は特化しているので、まずは一般的な構造から解説します。
大腮(おおあご)・・・いわゆる一般的な昆虫の口と認識されているパーツ。クワガタムシの角はこれが巨大化したもの。(英語ではMandibles)
小腮(こあご)・・・大腮と対になる可動な感覚器官で、味覚など、多くの感覚をつかさどると考えられている。(英語ではMaxilae)
双翅目では通常はこれがヒゲ状になり小腮鬢(Maxilary parp)を形成している。
上唇(じょうしん)・・・(大アゴ)の基部・・口器の上面を覆うパーツのこと。(英語ではLabrum)
下唇(かしん)・・・そしゃく型の口器の底の部分をなすパーツ。(英語ではLabium)
○双翅目の口器はいわゆる蚊(カ)タイプの吸収口型とハエタイプの口吻型に分けられます。
次回更新に続く